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国際保健ビジョンのとりまとめを受け、発言する武見敬三厚生労働相(当時)=2024年8月26日、東京・霞が関、藤谷和広撮影

 厚生労働省は8月、国際保健の具体策を掲げたビジョンをまとめた。世界中の人が適切な医療保健サービスに負担可能な費用でアクセスできる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」の達成に向け、人材育成の拠点を来年、国内につくるとした。ただ、厚労省は国内志向が強いとされ、どこまで成果を残せるかは不透明だ。

 ビジョンを取りまとめた会合で、武見敬三厚労相(当時)は「紙の上にとどまらせることなく、具体的に実施するという段階に入る。誇りと自覚を持って取り組んでほしい」と念押しした。

 ビジョンの柱は、UHC達成を支援する「ナレッジハブ」の設置だ。ナレッジハブは、世界保健機関(WHO)と世界銀行が研修プログラムを用意し、途上国の保健や財務に関わる人材を育成する。

  • パンデミック対策、経済、外交 日本が国際保健に取り組む意義とは

 日本では1961年に医療の国民皆保険が始まり、医療提供体制の整備も進んだ。早期にUHCを実現したことが、世界有数の健康寿命につながったとされる。また、高齢化に直面しつつある国からは、日本の介護保険制度も注目されている。

 一方、途上国を中心にUHCが整っていない国は少なくない。2023年5月の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)では、30年までに全世界でUHCを達成する目標とともに、「世界的なハブ機能の重要性」が確認された。

 厚労省と財務省はナレッジハブを財政面で支えるほか、日本の経験や知見を各国と共有したい考えだ。保健だけでなく財務の視点も入れることで、自国の財源を確保し、保健医療の体制整備に活用するよう働きかける狙いがある。

 ビジョンには、来年4月に創…

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